音楽院卒業生の進路
演奏家の道。オーケストラ団員かフリーランス
イタリアの音楽院の卒業生の進路はまちまちです。
イタリアでは総じて音楽家の仕事状況は厳しいです。
演奏活動で生活している人は、オーケストラの団員か、フリーの演奏家です。
公立オーケストラのオーディションバイオリン1台のポストには、大体いつも100人から200人が応募しますので、合格率はかなり低いです。
そしてその倍率を突破しても、1年契約か長くて3年契約が通常です。
なので、その期間の後、再び高倍率のオーディションを受けなくてはなりません。
実力よりもコネが物を言う場合もありますので、腕を磨くと同時にコネも増やさなくてはなりません。
フリーの場合は、よりコネと実力が物を言いますので、常に顔を広めてコンタクトを探さなくてはなりません。
実力を見せつけるには、コンクール、オーディションで好成績を収め、エージェントに登録してもらうのが仕事を始めるのに重要です。
歌手の場合は特にそうで、はじめはコンクールに出場して顔を広め、エージェントにコンタクトをとって呼んでもらったり、オーディションに積極的に参加し舞台の役を獲得する必要があります。
そのような活動をして実力を認められつつ、業界でのコネを広めていくのです。
音楽教師
演奏家以外の職業では、教師があります。
地元の音楽学校に就職したり、音楽院の非常勤講師、公立学校の音楽教師があります。
そこでも特別なコネがなければ、長い長い順位表の上位者からポストを得ていきますが、苦労して教職についても、1年から3年の契約社員しかありません。
音楽業界には定職はもはや存在しないと言われています。
一番いいのは自分で近所の子供や大人を集めてレッスンすることです。
これも自営業ですので安定性はないですが、少なくとも自分の生徒なので、契約が切れても職場から手ぶらで追い出されることはありません。
音楽家の税制
イタリアでは2016年から自営業者に対して簡易税制が発足したので、自営業が以前よりしやすくなっています。新税制では、年3万ユーロ以下の稼ぎの自営業音楽家の場合、所得税が5%と、社会保障費が30%弱となっていますので、35%プラス税理士及び諸費用で稼ぎの約半分が手元に残る感じです。
旧税制では所得税も約33%ありましたので、社会保障費と合わせると65%ほどが税金の支払いとなりました。ですので、2016年からは如何に楽になったかお分かりいただけると思います。
このようにイタリアでも音楽業界の仕事状況はかなり厳しいですので、多くの卒業生はパートの仕事を2つ3つと掛け持ちしながら、副業として演奏や教育活動を続けているのが一般的です。