音楽の国、イタリア。
ヴェローナのアレーナ劇場の夏のオペラはとても有名で、
世界中から多くの人々を呼び寄せています。
そんな中、アレーナ劇場が倒産したとの情報が2016年には駆け巡りました。
そんな中、今日の話題はイタリアでプロの音楽家がどうやって生活しているのかということについてです。
プロのクラシック音楽家にもいろいろな種類があります。
音楽家という職業は医師や弁護士と違い、法律で特に規定されていないので、誰でも音楽家と名乗ることが可能ですが、オーケストラや学校などに職を得るには、最低音楽院を卒業している必要があります。
オーケストラや学校の先生の給与は月給で1200ユーロから1500ユーロくらい。イタリアの平均的月給ですね。
現在ではオーケストラや学校の先生も正規新雇用というのがないので、皆非正規雇用です。契約更新が3年までで、それを過ぎると再雇用はありませんので、また自分で職を探す必要があります(2016年5月現在)。
オーケストラや学校の先生になるには、オーディションや採用試験を受ける必要があります。オーディションにはかなり人が殺到し、バイオリン1台のポストに200人くらい集まることもザラ。
学校の先生になるには、試験結果及び経歴審査の順位表上位順から採用されていきます。
いずれにせよ、狭き門ですね。
国立音楽院の先生も、国レベルでの正規採用は1999年を最後にもう行われていません。その後、各学校が内部順位表を設定して採用したりしていますが、その審査基準というのは曖昧で、コネや政治的意図が反映した採用基準となっていますので、一筋縄では非常に入り込むのが難しい業界ということが出来ます。
フリーランスとしての音楽家
組織に就職するのとは違って、フリーランスとして音楽家をしている人もいます。主に歌手ですね。
オペラ歌手は基本すべてフリーランスです。劇場から呼ばれて歌いに行き、報酬を得るという形です。一度呼ばれるようになると、歌手は結構仕事があります。
他の楽器でもフリーランスは可ですが、何処からどうやって仕事を得るのか、というのは、自助努力となり、イタリアでは、バイオリン奏者でさえ、それだけで生計を立てるのは容易でないというのが現状です。
一番多いパターンが、(セミプロ)オーケストラに所属したり、教師をしたり、単発依頼でコンサートしたり、色々できることを自営業としてやるというパターンです。
これは就職先が決まらなかった若い音楽家がたどる道として最近最も多くなっています。零細自営業者の納税税率を最低の5%にするという零細自営業者支援政策が発表されてから、音楽家ばかりでなくあらゆる職業においてこの道を選択する若者が増えています。というか、企業が従業員を抱える負担を回避している今、それしか選択肢がないというのが現状です。
そうやって生活をアレンジしきれなかった多くの若者は、別に仕事をしながら音楽を続けています。一番多いのが、教師、倉庫番、販売員、店員等。
最近では普通の大学で勉強しながら音楽も文化活動として続ける若者も多いです。
普通の大学を出ても就職難の現状ですから、どうせならやりたいことをやろう、というのがスタンスですね。親のスネをかじれるうちはですが…。
イタリアへの音楽留学は、学費も安いのでいいのですが、その後の進路については、イタリア国内ではかなり困難な現状ですので、常に様子をさぐって進路及び仕事を決定することをおすすめします。